息子 0歳
赤ちゃんは、すぐ死ぬ。
独力で栄養を取ることはもちろんできないし、あらゆる事故に対して無防備だ。
妻が青ざめて言う。
「寝床が冷たいかなと思って、下におくるみを敷いておいて。ちょっと目を離した後で様子を見てみたら、顔がおくるみに覆われてるの。ほんとびびった。こんなんで窒息するのかって。危ないとこだった」
乳幼児突然死症候群(SIDS)なんていうのもある。はっきりした原因は不明だとか、恐ろしすぎる。
そしてちょっと大きくなって自分で動き出したら、転落やら交通事故やら変なものをのみこむやら新たな危険が押し寄せてくる。ちょっとしたことですぐ死ぬ。
不謹慎ながら、おっさんとしてはもうこれはゲームの「スペランカー」を思い出さざるを得ない。
日本の乳児死亡率は1000人に2人らしい。世界平均では1000人に28人だそうだ(2021年)。
日本の低さは奇跡的に思える。こんなに危険に満ちていても、99.8%は1歳を迎えられる。
99.8%?
アメフト漫画「アイシールド21」で蛭魔妖一が言っていたセリフを思い出す。
「勝率は...99%ってとこだな」
これに喜ぶメンバー。対して蛭魔は深刻な顔で言う。
「1%、負けるんだぞ」
これに倣えば、
「0.2%、死ぬんだぞ」
とんでもない。こんなに必死で育てても0.2%死んでしまう。それが絶対に自分の身に起きないとは言い切れない。その事実が怖すぎて受け止められない。
しかしアフリカなら、乳児死亡率が1000人に50人を超える国もざら。今戦争が起きている国でも、過酷な状況で子供が死んでいく。
自分で子育てをしてみると、戦争がいかに大きな不幸を作るのか身にしみて理解できる。